4月8日   私は三年生

 

 

えぇ〜っと、実はオレ、3年なんだ。

名前も『桜井和也』じゃないんだ。

気軽にカズなんて呼ばないで。

出身は新潟の海沿いだ。

趣味はケーキ作りだ、文句あるか?!

 

 

 

あぁ〜あ、

自分を一年生と偽っての『春』を探そう作戦。

 

結論から言ってしまおうか。

 

 

だめだったよ。

惨敗だよ。

ぼろ負けだよ。

おやっさん、真っ白に燃え尽きたぜ・・・。

あべし。

 

 

それでは、いかにダメだったか反省しながら書いていくか・・・。

 

AM10:00から「サークルの説明会」というものがあった。

オレは、この説明会にまず、照準を合わせていたのだ。

 

格好は前回触れたように、

・キャスケット帽。

・髪の毛は控えめなダークブラウン。

・ひげはしっかりと剃る。

・清潔感の漂う白系のYシャツ。

・可愛らしさと格好良さを兼ね揃えた加工ジーンズ。

・ブラウンの革スニーカー。

・JPゴルティエの黒バッグ。

 

清潔感を前面に押し出した格好で、いざ前橋キャンパスへ。

友人が車を出すというので、それに「あいのり」して行った。

しかし、ここから既に間違った行動をしていたのかもしれない。

他人の車に乗る、ということは「夜の飲み会」に

出席することが必然的に不可能となるのだ。

 

これは痛かった。

「お持ち帰り」という技を自ら封印してしまったのだ。

 

 

あの時は、自分の車で行けばお酒が飲めない。

もし飲んでしまったら「飲酒運転」になってしまう。

と思っての行動だったのだが、

寝袋を持って行けば良かったのだ。

去年のホームレス時代の経験をいかせば、そんなことは簡単だ。

ビバークなんぞ何も難しいことではない。

しかも、車という風除けもある。

 

あぁ、ここから既に破滅への運命は決まっていたのかもしれないな。

 

 

 

 

キャンパスに到着。

オレはサークル説明会の開始時間、5分前に会場に入った。

しかし、会場は一年生で既に満員だ。

 

これも失敗であった。

一年生はこれからの大学生活に間違った希望を抱き、

開始時間の30分前にはほとんどの人間が来ているのだ。

5分前に来る、なんて行動は一年生にはあり得ない行動なのだ。

30分前行動!

このくらいの意気込みは必要であった。

 

 

中に入ると、もう座る席がほとんど無い。

しかし、立っていたら一年生の友達を作ることが出来ない。

無理矢理にでも座る席を探す。

確かに席は残っているようだが、その残っている席は

女性の団体の隣、もしくは、いかにも暗い人の隣

しか残っていないのだ。

 

女性の隣は良い!

オレの春を掴み取る、という目的にも合っている。

しかしだ、いきなり隣に座って話しかけるというのは

オレ様のキャラではない。

徐々に攻めて行くのが作戦なのである。

ストレートの直球勝負は嫌いなのだ。

ちょっと、女性の隣は避けたい。

 

あ、暗いヤツの隣に座るってのは問題外ってことで・・・。

 

 

むぅ、本気で席が無いぞ。

しかし、しっかり探してみると男の団体の隣に一席空いている所が

2ポイント存在していた。

 

よし!

このどちらかに座るべし!

片方のA地点には男の4人組。

見た感じ、かなり気合いの入っている団体だ。

彼女を見つけるぞ!

と、いうオーラに包まれている。

なるほど、ここに座ってヤツ達と仲間になれば行動もしやすい。

この席はアリだな。

 

もう片方のB地点には男の3人組。

A地点に比べると気合いの入り具合は弱いが、

A地点まで気合いが入っているのは自分とソリが合わなそうだ。

しかも、このB地点には付属ボーナスとして前後の席が女性の団体。

前の席には、垢抜けていないが可愛い系の女性達。

後ろには、かなりの美人系がそろっている。

 

おぉっ!

ここの席はいいぞ!

男どもと仲良くなったついでに前後とも・・・

という作戦が違和感無く自然に出来る。

 

 

決めた。

B地点の男3人組の隣に行こう!

 

 

と、いうわけでヤツらの近くに行く。

もちろん一年生らしさを出すために例のキョロキョロ歩きで近づく。

 

隣まで来て、彼らに尋ねる。

 

お兄 「すみません、隣の席空いてますか?」

1年男 「あ、いいっすよ。 どうぞ。」

お兄 「どうもー。」

 

これで席をGETだ。

よし、間をおかずに彼らに話しかけて友達になるぞ。

 

お兄 「悪いんだけどさ、サークル紹介の冊子忘れて来ちゃって。

     いっしょに見てもいい?」

1年男達 「あぁ、いいよ。」

 

 

もちろん、3年のオレがサークル紹介の冊子を持っている訳がない。

忘れた、なんてのは嘘だ。

そもそも貰っていないんだから・・・。

しかし、これで彼らとの距離は確実に縮まる。

友達度+3ポイントだね。

 

でも、まだ口を閉じてはいけない。

どんどんとしゃべって仲良くなっていかなくては!

 

 

お兄 「ねぇ、学部はどこ?」

1年男A 「オレ達、全員工学部なんだ。」

お兄 「あ、オレも工学部なんだよ。 学科は?」

 

ここで嘘をついてもしょうがない。

単位の話とかをされてしまったら他学部だと全然分からない。

本当のことを、ここでは言っておく。

工学部であると。

 

しかし、学科までばらしてしまうのは危険だ。

既に名簿は配布されているに違いない。

下手に同じ学科を言って名簿番号が近いと速攻でばれてしまう。

先にヤツらの学科を聞いてから、自分の学科がどこであるか

決定することにしよう。

 

1年男A 「オレは電々。」

1年男B 「こいつとオレは生化。」

1年男C 「よろしく。(コイツは生化)

 

よし、これでオレの学科は決まったな。

ヤツらと違う学科名を言えば良いのだ。

 

 

お兄 「オレは応化なんだ。 桜井和也だよ。 よろしく!」

 

 

もう、名前を言っても問題無いので偽名・桜井で自己紹介。

学科の違う人間に何を言おうと構うことは無い。

どうせバレるはずが無いのだから。

 

 

1年男A 「細山斉(仮)だよ。」

1年男B 「上田幸平(仮)。」

1年男C 「山田太郎(仮)だよ、よろしく。」

 

よし、ここまで自己紹介をしておけば問題無いはずだ。

あとはヤツらが質問してきたことに答えれば良い。

受身姿勢で待つべし!

 

細山 「えっと、桜井君だよね。 桜井君はサークルもう決めた?」

お兄 「ああ、まだあんまり決めてないんだ。

     でも運動系のサークル入ろうとは思ってるんだ。」

上田 「なんか高校の時に運動部やってたの?」

お兄 「うん。 剣道部やってた。」

一同 「おぉ、かっこいいじゃん! じゃ、剣道は?」

お兄 「いや、もう、あのスポーツはいいよ。 汗臭いし。」

 

これは本当の気持ちだ。

剣道はもういいんだ。

できれば3段の資格を取っておきたいが、今さら始めても無理だろう。

しかも、剣道部には知り合いがいるから1年としての入部は不可能。

 

お兄 「外で動けるスポーツがいいな。 スノボ部とかいいかも。」

細山 「え、スノボ出来るの?」

お兄 「オレ、出身が長野だからさ。」

 

 

はい、ここで嘘をつきました。

違いまーす。

出身は新潟でーっす。

噂でオレの出身高校からここに来てるヤツがいるらしいから

念のために、こんな嘘を言っておくのだ。

長野は先月遊びに行っていたので質問されてもOK!

 

一同 「すげー、今度教えてよ。」

お兄 「いや、教えられるほど上手くは無いんだけど。

    でも、今度いっしょに行こう。」

 

 ・

 ・ 

 ・

 

そんな勢いで話していき、

とりあえず彼ら3人組とは仲良くなって携帯番号の交換もした。

ただし、メールは教えねぇ。

アドレス教えると本当の名前がバレてしまうしな。

 

 

 

まぁ、ここまでは作戦通り。

さて次だ。

前後の女達と仲良くならなくては!

 

と、思って後ろを振り返ると・・・

 

 

 ・

 ・

 ・

いねぇ!

 

いつのまにか後ろの女性達が帰っている。

ああああぁぁあ・・・。

せっかく仲良くなろうと思っていたのに・・・。

 

 

もう、やる気を失ったよ。

部屋を出よう。

 

 

お兄 「あ、ごめん。 オレこれからスノボ部の説明聞きに行かなきゃ。」

細山 「そうなんだ。 じゃ、またね。 今度遊びに行こう。」

 

せっかく仲良くなったが、男1年と仲良くなってもあまり意味は無い。

悪いがさらばだ。

2度と会うことも無いだろうな。

 

 

 

 

さて、説明会にはもう飽きた。

自分で歩いて勧誘されよう。

と、決意して、外をキョロキョロ歩きしていく。

 

周りには勧誘のためのビラを持った数々のサークルの人間。

しかし、だれもオレにビラをくれない。

一瞬は渡そうとするが、オレを見ると無言でビラを引っ込める感じだ。

 

これはいったい何なのだ?

嫌がらせか?

それともオレが一年生に見えないのか?

 

恐らく答えは後者であろう。

1年にオレは見えないらしい。

 

後で知り合いに聞いてみたところ、

加工デニムパンツがだめだったらしい。

あんなに気合いの入っているパンツを1年が持っている訳ないだろう・・・。

とのこと。

 

 

むかついたので、サッカーコートの前で立ち尽くし、

見学する1年生を演じてみた。

 

しかし、

「お〜い、お兄じゃん! 久しぶりー!」

 

 

ギャーッス!

変装(?)していたのに、知り合いにバレてしまった。

あの野郎、サッカー部だったのか。

 

 

 

もう、本気で嫌になった。

1年のフリはやめよう。 終わりだよ。

 

時間にするとAM11:30。

オレ様の1年生としての演技はわずか1時間30分で終わってしまったのだ。

 

 

 

 

帰り際になって、やっとビラを貰った。

 

勧誘員 「一年生ですか〜?」

お兄  「気分だけ一年生です。」

 

勧誘員 「本当は?」

お兄  「3年です!」

 

勧誘員 「こういうのに興味はありませんか?」

 

 

そう言ってオレにビラを渡して来た。

ビラに書いてあったのは『真の国際協力』。

 

 

勧誘員 「世界には恵まれない人がたくさ・・・」

お兄  「恵まれていないのはオレの方だよ。 『春』をくれよ・・・。」

 

 

 

どうでもいいが、後で男3人組の一人から電話が来た。
適当にごまかしたけどさ。
ごめんね、細山君(仮)。 言えないけど実はオレ3年なんだ・・・。

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